水滸巡礼~108の足跡~孫二娘(そんじじょう) 第7回

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人肉マントウを売る女

武松も認めたその豪胆さ

 

孫二娘は、夫とともに居酒屋を営んでいた。

しかし、ただの居酒屋ではない。

客として来店した旅人を殺して金品を奪い、

遺体をマントウの餡にするという、恐ろしい店だったのだ。

そして孫二娘は、持ち前の美貌と、

追いはぎ強盗であった父から受け継いだ武芸や怪力で、

次々と客を襲っていた。

そんな彼女は、残虐な鬼神・夜叉にちなみ、「母夜叉」と呼ばれる。

 

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孟州市の北部を流れる黄河。

梁山泊のあった場所(山東省西部)は、黄河によって形成されたという

 

ある日、虎退治で有名になった武松が店にやって来た。

孫二娘はそうと知らず、注文された肉マントウと酒を用意。

一口食べた武松が、「これは人間の肉か犬の肉か」と問うと、

孫二娘は慌てることなく、

「人や犬の肉は食べさせません。牛の肉です」と答えた。

しかし、武松をもマントウにしてやろうと機を窺い、

最後にしびれ薬を盛るのだった。

孫二娘が倒れた武松を持ち上げようとすると、

彼は突然動き出し、孫二娘を押し倒して馬乗りになった。

最初から彼女を怪しんでいた武松は、

酒は飲まず、目を回したふりをしていたのだ。

孫二娘は諦め、降参すると、その後は武松を何度も手助けし、

武松もそんな孫二娘を頼もしく思い、彼女に入山を勧めた。

そして、梁山泊で彼女は夫・張青と、

諜報機関として機能する料理店を経営するほか、

軍人としても華々しい活躍を見せていく。

 

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孟州市郊外にある韓園は、

唐代(618~907年)の詩人・韓愈(かんゆ)の陵墓

 

孫二娘が居酒屋を経営していた孟州市。

河南省の北西部に位置し、市の北部を黄河が流れる。

唐代の詩人・韓愈の故郷として知られ、

韓園や黄河湿地など、数多くの観光地を有する。

「母夜叉」と恐れられた孫二娘の心は今でもまだ、

母なる河、黄河に眠っているのだろうか。

 

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~広東ジャピオン2014年3月10日号

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