水滸巡礼~108の足跡~呉用(ごよう) 第38回

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327水滸巡礼 人物

 

清濁併せ呑む知略家

智を以て敵軍を打ち破る

 

呉用はもと鄆城県(現山東省菏沢市)の寺子屋教師。

書生らしく道服を着用し、

白い肌に秀でた眉、長い顎鬚をたくわえていた。

あらゆる書物に通じ、軍事においては智略に富み、

様々な策を講じることから、「智多星(ちたせい)」と呼ばれた。

 

327水滸巡礼 縦風景

廊坊白塔寺。

かつて、和尚が門前の木を切ったところ、

水が海のように溢れ出し、塔だけが残ったという伝説をもつ

 

ある時、呉用は、かねてより親交のあった晁蓋(ちょうがい)に請われ、

朝廷の役人が輸送させていた賄賂「生辰綱」の強奪を企てる。

ゴロツキの白勝(はくしょう)を利用し、

「生辰綱」を見事奪い取り、呉用らは梁山泊へ逃げ込む。

当時の梁山泊は王倫(おうりん)という男が仕切っていたが、

同じく梁山泊に逃げ込んできた林冲をそそのかして

クーデターを起こさせ、晁蓋を首領の座につけた。

そして、晁蓋の死後は宋江を次期頭領に推し、補佐した。

 

呉用の智略は、敵将を仲間に引き込むときによく発揮されたが、

後の梁山泊頭領となる盧俊義(ろしゅんぎ)の場合が特に印象深い。

呉用は占い師の振りをして盧俊義を欺き、

家族と仲違いまでさせて仲間に加えた。

また、戦とは無縁な書道家と彫刻家を欺いて入山させたりするなど、

時には卑劣と言うしかないようなやり方もした。

しかし、それはできるだけ無駄な犠牲を出さずに、

有能な人物を引き入れるための策でもあった。

 

327水滸巡礼 横風景

香河県の天下第一城は、1998年に開園したテーマパーク。

明・清代の北京城を模している

 

呉用が謀略で落とした地域の1つ、河北省廊坊市。

梁山泊が攻略した当時は覇州と呼ばれた。

北に北京市、南に天津市と接し、清朝末期に北京、

天津市などを通る鉄道建設に伴って発展し、

印刷業が盛んな地として知られるようになった。

比較的新しい都市だが、

大昔に天才軍師、呉用が通った地であったことを知る者は少ない。

 

327水滸巡礼 地図

 

~広東ジャピオン2014年10月27日号

 

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