民族訪ねて三千里~ホジェン族(赫哲族)第30回

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魚と鹿皮の民族衣装

泥と海水で作られた人

 

ホジェン族は、中国少数民族の中で最も人口が少ないとされる。

居住地は黒龍江省からロシアにかけ、

アムール川(黒龍江)とスンガリ川(松花江)流域に跨っており、

ロシアでは「ナナイ」という名で呼ばれる。

日本の映画監督・黒澤明が、1975年に制作した映画『デルス・ウザーラ』は、

ホジェン族の生き方を描いたものだった。

 

その祖先は川で捕れる魚や鹿の皮で作られた衣服を身に着け、

犬を連れて漁業と狩猟、採集を行っていたという。

この生活形態は、同じ北方に暮らす民族として、

日本のアイヌ民族にも通じるところがある。

 

ホジェン族には、「イマカン」という独唱型の叙事詩があり、口承によって伝えられてきた。

内容は、〝モルゲン(英雄)〟や〝アジン(首領)〟が

〝コリ(神鷹)〟に変身する女性に助けられ、

敵や仇を討つ物語が主題となり、ほかにもシャーマンや狐の物語など、実に豊富だ。

イマカンは、狩猟や採集に出掛けた野営地でたき火を囲み、

また冬は温かいオンドルの上で語られる。

 

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1. ホジェン族の子どもたち。夏の装いは生地も薄く軽やかだ

2. 中国とロシアの国境。この辺りの川や土地は、全て2言語での名前を有する

3.映画『デルス・ウザーラ』のポスター。左が日本のもの、右はロシアでの公開用

 

また、ホジェン族に伝わる神話や伝説は

「トロンゴ(特侖固)」と呼ばれ、代々継承されている。

万物の由来を伝えるトロンゴは、次のような一節で始まる。

「まだ世界に海と泥しかなかった頃、神は泥と海水を手にし、握って大魚を作った。

またいくつかの泥人形を作り、陽の下で乾かして人にした。

人間の汗がしょっぱいのは海水で作ったから、

毎日入浴するのは泥を流すためと言われている」。

 

彼らの暮らす土地は寒さが厳しく、伝統芸能も辛い生活を描いたものが多いが、

少数民族の長い歴史に触れ、その悠久の時を感じてみたい。

 

~広東ジャピオン2013年7月8日号

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