身体バランスを整える
体質に合わせた冷え性対策
日本人女性の約7割が冷え性と言われる昨今。暖かい室内にいても、手足が冷たくなってくる、そればかりか太ももや腰周りまで冷えて、なんとかしたい! と思っている人も少なくないだろう。「身体を温めるには辛いもの!」、「運動すれば良いっていうし、泳いでおこう」。それでも全然改善しないという人は、そのやり方が体質に合っていない可能性も! 冷え性のタイプによっては、辛いものがタブーだったり、運動は軽めに済ませた方がいいものもあったりする。
そのタイプを知るのが、中医学の考え方だ。
「冷え性の解消は、中医学の得意な分野のひとつです」。
こう説明してくれたのは、「ボディ&ソウルメディカルクリニック」に勤務する中医師の古川先生。
過去に何人も冷え性を改善してきたという。
中医学的な冷え性のメカニズムは、身体のバランスの崩れによるのだそう。
「中医学的には、身体は『陰』と『陽』で成り立っています。
このどちらも多すぎず少なすぎず、偏りなくある状態がベスト。
でもこのバランスが崩れた時に、身体に不調が生じるんです」。
さらにこの「陰」と「陽」のバランスは、「気」・「血」・「水」という3要素からなっている。
冷え性の改善は、この3要素で足りないものがあれば補い、多すぎれば排除していくことが大事なのだ。
原因はひとつじゃない!
複数のタイプに対処を
次ページから詳しく紹介するのは、日本人の冷え性に特に多いといわれる3つのタイプ。
それが「血」が乏しい「血虚」、「陽」が足りない「陽虚」、「気」が滞っている「気滞」と言われる状態だ。
軽度の冷え性であれば、その原因は前述のいずれかのタイプのひとつであることが多い。
しかし、重度の冷え性となってくると、原因が2つ、3つ混在していることも珍しくない。
こうなってくると、「血虚」にはいいけど「気虚」にはよくない、
なんていう食材や生活習慣もあり、2つの混在した冷え性はより複雑な対処が必要となる。
次ページからのタイプに当てはまらない、もしくは全部当てはまってしまうなんていう場合は、
中医学の専門家に状態を診断してもらい、その指示の元に改善していくのがベターだ。
根本の体質から改善して、冷え性とおさらばしよう!
赤色系食材が「血」を補う
湿気た場所には要注意
日本人にもっとも多い冷え性のタイプが、この「血虚(けっきょ)」。
これは血が乏しい状態であることを指している。
例えば、「湯船に浸かって血の巡りがよくなった」、というように、
血の元気度と身体の温まり具合は、密接に関係しているのだ。
手足の先が冷えるのは、血が乏しく巡りがよくないため。
そのため、お風呂に入ったり、布団に入ったりしても、身体がなかなか温まらないという状態になってしまう。
さらに、血が乏しいことは、生理不順や貧血などの原因にもなりうる。
そんな「血虚」タイプの冷え性改善には、血の全体量を増やして、
血巡りの良い身体作りをしていくことが有効。
中国では、血を作ってくれる「補血(ほけつ)作用」のある食べ物、という概念がある。
そうした補血作用のある食べ物の特徴は、「赤色」。
血の赤、と覚えると良いだろう。
「枸杞(クコ)」の実や「棗(ナツメ)」は、補血作用のある代表的な食材だ。
中国語学校の先生や、同僚の中国人女性が教室やオフィスで食べたり、
お湯に浸して飲んだりしているのを見たことはないだろうか?
上海でも非常に一般的な食材で、野菜市場やスーパーの乾物売り場で購入できる。
食材で血を補ったら、あとは血を送り出すポンプを鍛えること。
すなわち運動も、「血虚」タイプの冷え性を改善するひとつの方法。
心当たりのある人は、是非試してみよう。
黒色系食材で「温」をとる
身体の熱を取り戻そう
冷え性の女性で、「血虚」の次に多いと言われるのが「陽虚(ようきょ)」。
実は、「陽虚」タイプでは、「血虚」タイプよりも重度の冷えが多いのだとか。
手足の末端だけでなく、手首足首、さらには肘・膝まで冷えるなんていう人は要注意だ。
「陽虚」の原因は、身体を温めてくれるはずの「陽」が不足していること。
そうなると、手足が常に冷たく、特に下半身に影響が出やすくなる。
膀胱炎を繰り返したり、腰周りが痛んだりするとしたら、可能性が高い。
「陽虚」タイプが気をつけることは、
身体の「陽」を奪われないようにすることと、「陽」を補っていくこと。
まず、「陽」を奪われないためには、
冷たい食べ物や飲み物、サラダや刺身などの生ものの摂取をできるだけ避けること。
特に夏野菜や南国フルーツ、
水分の多い食材には身体を冷やすものが多いので、できる限り減らそう。
逆に摂取を増やしたいのは、身体を温める食材。
黒豆・キクラゲなどの黒色系の食材のほか、ターメリックやシナモンなどの香辛料も有効。
また、羊肉も身体を温める効果があるとされ、上海でも冬に羊鍋の店が繁盛するのはそのためだ。
さらに、身体の表面から奪われる熱も減らす必要がある。
例えば水仕事をするときにはゴム手袋をするなどの工夫や、
女性であれば、冬場はスカートを極力避けることが望ましい。
身体の熱を大事にして、温かい生活を送ろう。
イライラは身体を冷やす
香り系食材でリラックス
冷え性といえば、女性のものと思われがち。
でも、最近では男性の冷え性も増え始めているとか。
その主な原因が「気滞」といわれる状態なのだ。
「気」は、正常な状態なら、身体中をスムーズに駆け巡っている。
しかし「気詰まり」という言葉に代表されるように、この「気」が身体のどこかで詰まってしまうことがある。
詰まれば、身体中に気が行きわたらなくなる。
そうすると、気がない、つまり「元気ない」状態になってしまうわけだ。
この「気」と冷えは、「血」と関係してくる。
「気」は「血」と一緒に身体を巡っているので、「気」が滞れば、「血」も滞り、
「血」が身体全体に行きわたらなくなって冷えにつながるのだとか。
こうした理由から「気」の滞りによる冷えを解消するには、まず気の流れを改善すること、
すなわちストレスを取り除き、リラックス状態にもっていくことに尽きる。
食材であれば、ハーブ系や、香りが良いと感じるものを取り入れるのがベター。
しかし、これらをたくさん摂取するというのではなく、あくまで適度に取り入れることが肝心だ。
また穏やかな環境作りも大切。
上海では、工事があちこちで行われていて騒々しいと感じる人も多いはず。
そんなときは、穏やかになれる環境で一息つくことも大切だ。
日々思い悩まずに、イライラを取り除くことが最大の攻略法。
時には休息をとって、身体をストレスから解放しよう。
~広東ジャピオン2014年11月24日号