旋風起こる所に鉄牛あり
虎に襲われた母への純心
李逵は殺人鬼の星、天殺星の生まれ変わり。
「板斧(はんぷ)」という2丁の斧を使い、
歯向かって来た者は、女、子どもも容赦なく斬る。
むさくるしい髪に、血走った目をした色黒の男であることから、
「黒旋風(こくせんぷう)」、「鉄牛(てつぎゅう)」などと呼ばれた。
沂水県南西部に位置する沂水大峡谷。
地下には全長6100mを誇る鍾乳洞がある
李逵は故郷で人を殺め、江州に逃れてから、
牢役人の戴宗(たいそう)のもとで働いていた。
そんなある日、噂に聞いた宋江がやって来た。
李逵は、彼をもてなそうと、金を手に入れるため賭博場に入ったが、
大負けして暴れ、店を壊してしまった。
しかし、宋江は李逵を慰め、
李逵は宋江の寛大さに感動し、彼に付き従うことにした。
数カ月後、宋江が宋軍に反逆罪で捕らえられてしまう。
そこで李逵は仲間と救出に向かい、先頭に立って敵城に入った。
見物人も含め、邪魔者はすべて斬り捨て、宋江を救出。
無関係な者まで殺したが、手柄を認められ、入山することに。
その後、李逵は故郷に残してきた母親が心配になり、連れて帰ることにした。
しかし、母親と梁山泊に向かう道中、母親が虎に食われてしまう。
李逵は涙を浮かべ、狂ったように斧を振って虎を殺した。
李逵は山塞でよく騒ぎを起こし、厄介者扱いされていたが、
その実、幼児がそのまま大きくなったような純粋な心の持ち主だったのだ。
王羲之(おうぎし)墳墓。
東晋時代(317~420年)に活躍し、
「書聖」と呼ばれた書道家、王羲之が眠る
李逵が生まれ育った山東省臨沂市沂水県。
山河が美しく、春秋戦国時代の兵法書『孫子』の出土地として知られる。
梁山泊で暮らすため、母を迎えに再び沂水県を訪れた李逵。
母を背負い、共に暮らす日々を楽しみにしながら、
幼き頃に過ごしたこの地を歩いたことだろう。
~広東ジャピオン2014年6月30日号