水滸巡礼~108の足跡~湯隆(とうりゅう) 第17回

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306.水滸 人物

 

梁山泊唯一の武器職人

乱暴者、李逵との腕比べ

 

湯隆は、陝西省延安府の刀工。

博打に手を出し、全財産をそれにつぎ込んだ結果、

次第に落ちぶれ、その日暮らしをするようになる。

金属を扱う職で、身体じゅうが豹柄のようなあばただらけだったことから、

「金銭豹子」と呼ばれていた。

 

306水滸 建物

黄土高原。4世紀以来、黄土が堆積してできた高原で、

規模は山西、甘粛、青海省にも及ぶ

 

湯隆はある日、街中で棒の先に瓜形の鉄球がついた

「鉄瓜鎚(てっかつい)」なる武器を振り回していた。

重さ約20㌔もあるこの鉄爪鎚で、路傍の石を打ち砕き、

見物人たちを感心させたが、

そこに、梁山泊きっての暴れ者、李逵(りき)が現れる。

李逵が湯隆の鉄爪鎚を奪い取ろうとしたので、

いきなり手を出すとは何事か、と咎めた。

李逵は、湯隆の腕を大したものではない、

自分が手本を見せてやる、と鉄爪鎚を取って振り回して見せた。

いくら振り回しても疲れる素振りを見せない李逵を見て、湯隆は素直に負けを認めた。

相手が梁山泊の李逵であることを知った湯隆は驚いたが、

李逵もこの時、湯隆が刀匠であることを知る。

武器が足りない梁山泊にとって、刀鍛冶は不可欠な存在。

李逵はすぐさま湯隆に入山を請うた。

 

その後、呼延灼の77戦いで、梁山泊を苦しめた戦法「連環馬」を破る手段として、

湯隆は自作の「鈎鎌鎗(こうれんそう)」の使用を進言し、勝利に導く。

武器作りのみならず、実戦でも活躍し、一目置かれる存在となった。

 

306 水滸 風景

延安市宜川県に位置する壺口瀑布。

中国で2番目の規模を誇る滝として知られる

 

湯隆が生まれた陝西省延安市。

黄河の上、中流域に広がる高原、黄土高原の中部に位置し、

壺口瀑布や宝塔山など、多くの観光地を有する。

鉱物資源豊かな場所として知られるこの地に足を踏み入れれば、

湯隆の刀を打つ音が聞こえてきそうだ。

 

306水滸.地図

 

~広東ジャピオン2014年5月26日号

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