民族訪ねて三千里~キルギス族 第5回

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山岳地帯に住む遊牧民

世界最長の叙事詩マナス

 

キルギス族は、新疆ウイグル自治区の西部にそびえる天山山脈と、

西に接するキルギスに暮らす。

この地域に住むキルギス族は、

今もキルギス語を話し、アラビア文字を基調とした独自の文字を使う。

 

キルギスとは、テュルク語で「40人の少女」、「40の集落」などを意味し、

アジアで最も古い民族名の1つとして、

紀元前2世紀の史籍にも名を残す。

「キルギス」という言葉は本来カザフ民族を指すものだったが、

両民族には生活習慣や言語などの共通点が多い。

どちらも遊牧生活を営むが、草原に住むカザフ族に対し、

キルギス族は山岳地方を好み、拠点が異なることが特徴だ。

キルギスでは、男が羊を放牧し、

女は乳搾りやバターなどの乳製品を作る。

男たちが草刈りに出かけると、

女たちは羊を囲んで『ベクベケイ』という歌を歌って狼を遠ざける。

こうした暮らしは、一体どれだけの間変わることなく続けられてきたのだろう。

 

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1.『マナス』の歌い手。マナスは15世紀の文献に出てくるが、

作られた時期は7世紀とも言われる

2.遊牧民でありながら、天幕式住居『ユルト』のほか、

定住用の住居を持つことも

3.コムズを弾く少年。継承者は減りつつある

 

長い歴史をもつキルギス族の文化の1つとして

『マナス』という英雄叙事詩がある。

勇士・マナスを始め3代に渡る周辺民族との戦いを歌ったもので、

世界最長の叙事詩という。

文字にして8部、20数万行にもわたる内容を、

千年も昔から口承してきたというから驚きだ。

「マナスチュ」と呼ばれる語り手が、

弦楽器「コムズ」や、口琴「オオズ・コムズ」による伴奏に合わせ、

数日をかけて語る。

 

3000㍍を超える山々に囲まれた荒地もあれば、

なだらかな牧草地も広がる天山山脈。

厳しい天候の日が多いが、

大自然の織りなす壮大な景色に身も心も委ね、

壮大な叙事詩の世界に浸りたい。

 

~広東ジャピオン2012年12月24日号

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