石炭の里の〝恋の歌〟
白馬姑娘伝説と依飯節
ムーラオ族は、広西チワン族自治区の羅城ムーラオ族自治県に、多く居住している。
彼らの住む山間地帯には石炭が埋蔵され、「石炭の里」と言われている。
今でこそ石炭が主な経済基盤となっているが、
以前はやせた土地に住んでいることで苦労したらしい。
ムーラオ族には幾つもの昔話が伝えられている。
中でも「白馬姑娘」という話は、
彼らにとって最も重要な祭りである「依飯節」の由来の1つとなったもの。
古代、ムーラオ族の村を、獣王率いる獣たちが襲った。
その危機を、圧倒的な力を持って助けたのが、白馬姑娘だ。
彼女はその後、人々に穀物の種や、牛などを与え、村は栄えていった。
これを記念し、定期的に開いていた集会が、今の「依飯節」になったという。
1. ムーラオ族の若い男女。この雄大な自然の中、彼らは歌を交わし合う
2. ムーラオ族の老人。400年以上の歴史を持つ、古くからいる民族の1つだ
3. 美しい山々。ここには多くの石炭が埋蔵されている
ムーラオ族もまた、他の多くの少数民族同様、
歌垣文化と「走坡」と呼ばれる独自の恋愛形式を持つ。
「走坡」とは、前述の「依飯節」中に行われる、若者のためのイベントだ。
この日、女性たちは化粧をして華やかに着飾り、
男性もまた、下ろしたての服を着て、意中の女性を見つけ歌を贈る。
女性が承諾すると、歌を返して2人の関係がスタート。
お互いに自己紹介をし、ハンカチや布靴などを贈り合い、次の逢瀬の約束をする。
しかし、恋愛は自由だが、結婚は父母が決定権を持つ。
こういった封建的婚姻制度からは、幾度か悲劇も起きたと思われ、
民話の中には悲恋の物語も伝えられている。
彼らの村を訪れる際には、彼らが伸びやかに交わす〝恋の歌〟を、
ぜひとも聞いてみたいものだ。
~広東ジャピオン2013年4月22日号