民族訪ねて三千里~スイ族(水族)第21回

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鳳凰の羽のような山

毒蛇を脅かす刺繍

 

スイ族は、広西チワン族自治区からベトナムにかけて広く居住しているが、

中でも「鳳凰の羽のように美しい」と言われる、月亮山の麓に集中する。

自らを「睢族(アイ・スイ)」と称し、元々は河南省濉河付近に住む民族だったという。

 

スイ族には、「水書(ル・スイ)」と呼ばれる民族固有の文字で書かれた経典があり、

スイ族の神や霊魂、風水などを説いた内容が伝承されている。

「端節」などの祭事の際には、巫師による水書の朗唱から始まり、

伝統楽器「銅鼓」を打ち鳴らして、男たちが踊る。

銅鼓の音には霊力があり、作物の実りを助け、人々の生活に平安をもたらすのだとか。

 

現在では、水書を読むことができる「水書老師」もごく少数となり、

長い間受け継がれてきた伝統は絶滅の危機に晒されている。

 

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1. スイ族の女性。馬の尾に絹糸を巻きつけて縫う「馬尾繍」を施した民族衣装が美しい

2. 表意文字の「水書(ル・スイ)」。漢字をひっくり返したようにも見えることから、「反書」とも呼ばれる

3. 深い山の中にひっそりと浮かぶ月亮山

 

スイ族の女性は、衣服や靴に刺繍を施したものを着るが、この由来にまつわる伝説がある。

その昔、スイ族の暮らす一帯は深い密林で、毒蛇が出ることで有名だった。

ある日〝秀〟という少女が外へ出た際、毒蛇を見かけたが、

毒蛇は色鮮やかに咲く花を一見すると、コソコソと逃げていった。

 

秀は家に戻り、赤や緑の糸で服の袖口や襟、ズボン、靴などに花柄の刺繍をした。

再び外へ出ると蛇はみんな逃げていき、彼女はこれを姉妹たちに教え、

外へ出る時は刺繍を施した服を身に付けることを忘れなかったそうだ。

 

スイ族の村にそびえる月亮山は、

石灰岩の岩肌にポッカリと空いた穴が満月のように見えることから、この名が付いた。

見る角度によっては、三日月のように見えたりもするとか。

 

この月を肴に、もち米で作られた「九阡酒」を味わおう。

 

~広東ジャピオン2013年5月6日号

 

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