太陽を信じる子どもたち
山に鳴り響く奇跡の太鼓
ジーヌオ族は、多数がシーサンパンナの基諾(ジーヌオ)山の麓に居住する。
焼き畑農業によるトウモロコシやイネのほか、
バナナやパパイヤなど、亜熱帯果実の栽培も盛んだ。
「基諾(ジーヌオ)」とは、彼らの言葉で「おじの後に続く」という意味で、
ジーヌオ族が実の父より、母方の兄弟を尊重する母系社会であることに由来。
古来、太陽を信仰する民族として知られるジーヌオ族の衣装には、
太陽を模った刺繍が施されている。
その太陽が象徴的に崇められるのが、毎年旧暦12月に行われる「打鉄節」。
1年の五穀豊穣を祈るこの祭りでは、
「太陽鼓」と呼ばれる太鼓の演奏が披露される。
この太鼓は胴に17本の棒が装着され、中心となる丸い枠の周りに、
紅炎を彷彿とさせる棒が囲み、正に太陽のイメージ。
楽器としてだけでなく、太陽を表す祭器としても扱われる「太陽鼓」には、
次の伝説が残されている。
1. 長さ約60cmのとんがり帽が特徴。
青の生地に「太陽花(エロディウム)」の刺繍が施された胸当てと、襟無しの上着を纏う
2. 太陽鼓。除夕(大晦日)に打ち、除夜の太鼓として、新年の幸福を祈る
3. 基諾山はプーアル茶の6大産地の1つとして知られる
「かつて、世界が大洪水に襲われ、絶滅の危機に瀕した時、
ある女神が大きな太鼓を作り、その中に1組の男女を乗り込ませた。
川に放たれた太鼓は、流れに乗ってジーヌオ山に漂着。
2人は太鼓から出ると、この地で共に農耕に励み、結婚して子どもを育てた。
その子どもが子孫を残し、人口が増え、やがてジーヌオ族と名乗るようになった。
それ以来、太鼓は、滅亡から救った神聖な物として、信仰されるようになった」
このほか、毎年の新米、新作の収穫を祝う「新米節」など、
ジーヌオ族の代表的な祭りでは、必ず「太陽鼓」が登場する。
この地に足を踏み入れ、心にまで響いてきそうな太鼓の鼓動を深く感じてみたい。
~広東ジャピオン2013年12月16日号