蒼き狼と白き牝鹿
果てしない地平線
モンゴル、と聞くと広大な草原や遊牧民を連想しがちだが、
遊牧生活を営む人口は減少し、
北のモンゴル国との国境地域にわずかに残るのみである。
13~14世紀に書かれたとされる歴史書『元朝秘史』には、
〝上天より命ありて生まれし蒼き狼ありき。
その妻なる惨白き牝鹿ありき〟の一節で始まる始祖伝説が残されている。
灰色の狼と白鹿の間に生まれたバタチカンがモンゴル族の始祖で、
その10代目のドブン・メルゲンは他族のアラン・ゴアを娶った。
ドブンの死後、光がアランに生ませた子ボドンチャルが、
チンギス・ハンの祖先に当たるというものだ。
さらには、アランの不貞を疑った子どもたちに対し、
アランが子どもたちを5本の矢に喩えて信頼と結束を教えたという。
1.モンゴル史を記した歴史書『集史』には、チンギス・ハン即位の場面が描かれている
2.街中でも、たびたび馬頭琴とホーミーの演奏を見ることができる
3.空の青、草原の緑にゲルの白がよく映える
モンゴル族の伝統音楽といえばモリン・ホール(馬頭琴)に三弦、
そしてホーミーが有名。
内モンゴル自治区は観光地としても名高いため、
伝統音楽の伝承が推奨されている。
ホーミーは喉から、笛のような低高音2つ(時には3つ)を同時に出すことから
「スロート・シンギング(喉歌)」とも呼ばれる。
現在ではホーミーのバンドや歌手が世界的に売れるなど、
少数民族の音楽としては最も知名度の高いものといえる。
内モンゴル自治区の省都・フフホト市は都会だが、
自治区の北東部に位置するフルンボイル市付近には、
いわゆる「モンゴルの大草原」が広がる。
360度、多少の起伏はあれど、果てしなく続く地平線に囲まれ、
草原の風を浴びながらホーミーを聴く、
そんな夢のような旅もたまにはいい。
~広東ジャピオン2013年1月14日号