中国の小学校では、
日本の「理科」に当たる科目は、
「自然」と呼ばれている。
「自然」の授業では、
ありとあらゆる自然界に住む動植物や、
自然現象などについて勉強していく。
好奇心高める奇怪な植物
『共和国教科書』では、
全編白黒で印刷されているが、
その中でひと際目立つカラーのページがある。
そこには花と果物、鳥類の挿絵が入っている。
花は桃や菊、果物はバナナや柿、ブドウ、
鳥類は、孔雀やオウム、キジなど、
日本人にも馴染みのある生物たちが
カラフルなイラストで紹介される。
残念ながら、カラスだけはやはり黒一色なのだが…。
動植物の紹介は、
カラーページ以外でも、
詳細な説明が行われ、
特に注目に値するのは、
奇異植物という項目。
触るとおじぎするように葉を閉じるオジギソウと、
蚊やハエを食べる食虫植物・モウセンゴケを取り上げ、
児童の好奇心をくすぐり、
自然に対する興味を高めようとする努力が伺える。
民国時代にも、食虫植物を
夏休みの自由研究のテーマとした児童が
いたかもしれないと思うと、
何やら親しみが沸くというものだ。
度肝を抜く巨大な昆虫画
現在の上海の小学校2年生が使う
「自然」の教科書では、
ヒマワリやクモといった身近な動植物を主に解説している。
ただ、
B5サイズの教科書の1ページに、
ミミズやダンゴムシ、
はたまたハサミムシなどの
キョン中の巨大なイラストと写真が、
ドン!
と掲載されているのには度肝を抜かれる。
写真のグロテスクさにショックで悲鳴を上げ、
トラウマになって夜も眠れない児童もいるのではないかと、
少し心配になるが、
ワラジムシの出産やミミズの卵胞が孵化する様子など、
普段は見ることのできない、
生物の詳しい生態を知るという意味では、
これもアリなのかもしれない。
体育はスポーツや遊戯など各種運動を通じて、
心身の健やかな成長を目的とする教科だ。
民国時代であれ現代であれ、
その目的は変わらないようで、
教科書には、様々なスポーツが紹介されている。
玉入れのシビアなルール
『共和国教科書・新国文』には、
徒競走や縄跳びなど
5つ以上の体育関係の項目が掲載され、
日本でも運動会で行われる、
大縄跳びや「玉入れ(籠球)」を紹介する。
玉入れのイラストでは、
球が全く散乱していないため、
1人1個しか球を投げられないルールのようだが、
適当にボールを投げる児童や、
慎重にじっくりと狙いを定める児童が描かれ、
それぞれ性格の違いが見て取れるのも面白い。
ほかには、
「紙鳶」すなわち、
凧に関する授業もあったようで、
蝶々や鳥のほか、
ナマズやムカデの格好をした
変わり種の凧のイラストがなかなかユーモラスだ。
羽根蹴りや武術も学ぶ
現代の3年生の教科書を見ると、
表紙には運動場で児童が
元気よく遊んでいる様子が描かれている。
よく見るとグランドは土ではなく、
陸上競技場のように整備され、
中国の小学校の運動場の様子を窺い知れる(3P右参照)。
中を見ると、跳び箱や棒登り、鉄棒など、
かつて小学生時代に習った運動がイラスト付きで解説され、
懐かしい気分になること間違いない。
その一方で、
現代的なキックボードや、
日本ではなかなかお目にかかれないスポーツもチラホラ。
サッカーのリフティングの要領で、
数人が輪になって羽根を蹴る
中国伝統スポーツ「羽根蹴り(踢毽)」や、
中国武術・カンフーの型は、その最たるものだ。
基本動作からして
非常にアクロバティックな様子が見受けられ、
ハードな授業が想像される。
~広東ジャピオン2015年1月19日号