雷神を助けた兄妹
五色の刺繍〝壮錦〟
チワン族は、広西チワン族自治区を中心として暮らしており、
中国の少数民族の中で最大の人口を有する。
春秋時代には〝百越(バイユエ)〟などと呼ばれたが、
およそ50年近く前に〝壮(チワン)〟に改められたという。
チワン族の始祖伝説に、こんな話がある。
昔、伏羲(ふくぎ)と女媧(じょか)という兄妹の父親が
雷神を捕らえたが、兄弟は雷神を不憫に思い水を与えた。
元気を取り戻し逃げ出した雷神がくれた種を植えると、
大きな瓢箪が実った。
その後大洪水が訪れ、2人だけが瓢箪によって命を救われたという。
2人は結婚し、妹は肉の塊を生んだが、
その時風が吹き肉は粉々に割れ、
その1つひとつが人間になったのだった。
これと同様に、兄妹が出てくる始祖伝説は、
朝鮮族などいくつかの民族にも残る。
1.チワン族の女性。袖にラインの入ったシャツと、黒いワイドパンツが特徴
2.〝水墨画の世界〟と称される桂林の風景は、漓江から眺めるのが良い
3. 漓江の東に広がる七星公園。パンダやラクダ岩が見られる
彼らの生活は、牛耕や灌漑などの農業技術や、
紡績、木工、鍛冶などの手工業によって支えられている。
その技術は非常に高く、
中でも五色の色で刺繍を施した
〝壮錦〟の美しさは群を抜いており、
今でも多く生産されている。
またチワン族の人々は歌の上手な人が多いことでも知られ、
山歌『ナンフェイ』など、
7~8人が輪になって歌の掛け合いをする〝歌垣〟では
その歌のうまさと人数の多さとに圧倒される。
歌垣の歌詞は恋愛を題材にしたものが多く、
男女が声を張り上げ、
それぞれの地方独自の節回しを駆使しながら歌ってゆき、
交際を申し込むこともあるとか。
広西チワン族自治区には、
観光地として世界的に有名な桂林がある。
カルスト地形の山々が連なった幻想的な風景は、
死ぬまでに1度は見ておきたい。
~広東ジャピオン2013年1月21日号