伝統を守り蘇る木鼓
創世神話スカンリ
ワ族は中国雲南省南部のほか、ミャンマーやラオスにも住んでいる。
周囲にはチベット・ビルマ系の民族が多く、
この一帯ではその昔、首狩りの風習があったという。
ワ族を象徴するのが「木鼓」という
太い丸太の中をくりぬいて作った、木製の太鼓だ。
木鼓は、首狩りの儀式や祭りの歌と踊り、
村に災難が起き神様を呼ぶ時などに使われた。
この楽器を弾く風習は前世紀に1度途絶えかけたが、
村の役場に3つの木鼓が残されており、
伝統継承のために再び蘇ったという。
木製の杵で叩く低い音と、竹片で叩く細い音を交互に出して変化をつけ、
その傍らで40人ほどの男女が手をつなぎ、輪を作り、踊りを始める。
派手な動きは少なく、輪が崩れることはない。
1. ワ族の若い男女。今でも祭日にはきちんと民族衣装を着て踊るという
2. 木鼓を叩くワ族。5~10年に1度新しい木鼓を作る
3. 山の向こうはミャンマーと接している
またワ族には、「スカンリ」と呼ばれる創世神話がある。
内容は「小鳥がアワ山をつついて穴を空け、
祖先はこの小鳥と共に穴から出て陸地での生活を始めた。
家を建て、心を一つに故郷を作ったこと、
スカンリという洞穴から来たことを忘れず、子孫に伝えていく」というものだ。
スカンリは夜、竹筒に入った自家製の酒を飲み、
檳榔の実を噛み、焚火を囲んで歌われるという。
現在、ワ族は、主に畑作を行っている。
家を新築すると畑で作った陸稲のご飯を村人に出す。
青菜や、豚の干し肉を炒めたものをおかずにして、このピンク色のご飯を食べる。
また雲南省は、シーサンパンナや思茅がお茶の産地として有名だが、
ワ族自治県がある臨滄市でも近年茶栽培が行われている。
地ビールの「瀾滄江ビール」と合わせ、伝統の食を味わいたい。
~広東ジャピオン2013年2月4日号