アンティーク着物をリメイクした商品が並ぶ。壁には東寺の曼荼羅が
着物や古布を取り入れ、現代の洋服にリメイクするお店「衣曼荼羅 ゆらき」。
上海で医師として活躍しながらも、和の伝道師として日本文化の美しさを発信する、
芦田明日香さんの想いとは――?
東寺で出会った和の美
「シンプルな日本の美しさを世界に発信したい」と、笑顔で話す芦田さん。
同店オーナーとして、着物を粋な洋服や小物にリメイクし、日本の美を日々追求している。
芦田さんが着物と出会ったのは、店を開く半年前、
京都にある東寺の弘法市に行った時だった。
芦田さんが、売られていた男物の絵羽織を、遊び半分で裏返しに羽織ると、
「それ、おもしろい!」と母親が絶賛。
洋服に着物という意外な組み合わせに、芦田さんはインスピレーションを受けた。
これまで着物は何度も目にしてきたが、羽織との出会いで、その美しさを改めて認識。
そして、「もっと着やすい形に変えて表現できる美しさ。
この魅力を人に伝えられたら…」と、思いを胸のうちに秘めた。
田子坊に店を開く
元々、東洋医学に興味のあった芦田さんは、1992年に来海。
上海中医薬大学で中医学を学んだ後、
2005年に中医師免許取得を決意する。
その試験準備をしていた頃、母親が会いに来た。
2人で田子坊を訪れた時、
ふいに母親が「ここで着物のお店を開くのはどう?」と切り出した。
当時の田子坊は、石庫門というレンガ造りの住居が立ち並ぶ中、
地元の人たちが暮らしており、店は数軒ある程度だった。
その独特な雰囲気の中、東寺での感覚が蘇る。
「パリの裏町を感じさせるようなこの場所に、
アレンジした着物のお店を出したらどうだろう?
1年後はきっと雰囲気のあるお店になっているはず。
ここから日本の文化を世界に発信できたら…」。
芦田さんたちは開店を決意。
その時ちょうど1軒だけ貸出されていた店舗を、数日後に契約した。
調和と感謝の心
これまで店舗経営の経験はなく、
同地で初めて、外国人オーナーとして店を開いたが、
近所や店員など多くの人たちに助けられ、今では世界各国の人たちが訪れる店に。
その後、田子坊も店が増え、環境の変化も見られたが、
芦田さんが大切にしているのは、
「周りに影響され、一喜一憂することなく、どんな時でも自分の内なる平和を保つこと」という。
「新たな事への挑戦は子どもの頃から大好きで、
苦を苦とも感じない。
お客さんには店で着物に触れ、何かを感じ取ってもらえれば嬉しい」と語る芦田さん。
訪れるお客さんには、笑顔で気さくに話しかける。
店内には東寺の両界曼荼羅が掛けられ、芦田さんは今日もあの時の想いのまま、
日本の美を世界に発信する。
アンティーク着物をリメイクした商品が並ぶ。
壁には東寺の曼荼羅が
~広東ジャピオン2014年8月25日号