中国現代作家を読む(中)

451-P2

1980年代に生まれ、新しい価値観やライフスタイルから、

社会の注目を浴びる「80後」。

彼らを代表する作家として、突出した人気の2人を紹介しよう。

 

反骨的な青春文学・韓寒

17歳でデビューすると、〝韓寒現象〟と呼ばれる大ブームを起こし、

一躍話題の人となった韓寒。

後に高校を中退し、プロのレーサーとなってからも

定期的に作品を発表し続けている。

ブログやインタビューでの発言が話題になることも多く、

アメリカ『タイム』誌で、

「2010年度・世界で最も影響力のある100人」にノミネートされた。

反骨的で、問題発言が注目されがちな彼だが、

作品内では、淡々とした語り口で時代を切り取る。

『三重門』は『上海ビート』という邦題で、日本でも出版。

また、若者たちのアウトローな日々を描いた

小説『一座城池』をもとにした同名映画が、昨年9月に公開された。

反抗期まっただ中の若者の悩みを描き、

ブラックな笑いたっぷりの青春コメディに仕上がっている。

中国語力に自信のない人は、

先に映画を観てから小説に挑戦してみては。

 

詩的なライトノベル・郭敬明

かわいい笑顔に適度についた筋肉。

アイドル顔負けのイケメンの彼こそが、

中国作家長者番付で3度のトップに輝き、

常に上位をキープする超売れっ子作家・郭敬明だ。

前述の韓寒とは、何かと比較されがちだが、作風は全く異なる。

彼の作品の特徴はというと、幻想的な比喩を多用し、

登場人物たちの心情を細かに描き出す表現力。

その絢爛な言葉が生み出す、ドラマチックな少女マンガ的世界は、

10~20代の女性を筆頭に、熱狂的なファンを生み続けている。

彼の作品『非傷逆流成河』は

題を『悲しみは逆流して河になる』として日本でも出版。

また、本人が監督を務める映画『小時代』は、自身作の同名小説が原作だ。

 

451-P2

不条理な世界に迷う・残雪

1980年代中頃から、伝統的なリアリズムの枠組みを壊し、

新しい視点を持った実験的な小説が、次々と発表された。

その作者らは〝先鋒派〟と呼ばれ、

当時から現在に至るまで、中国内外において、高く評価されている。

 

奇妙な状況下で、奇怪な人々が奇異な行動を取る。

このような独特の文学スタイルを持ち、

〝中国のカフカ〟と称される残雪。

前衛的な作風はほかに類を見ず、中国国外での翻訳作品も数多い。

最近はカフカやボルヘス、ダンテなど、

欧米の文学作品の評論も精力的に行っている。

 

彼女の作品はまるで悪夢のようだ。

世界は死や毒、血や虫で溢れ、さっきまであったものが今はもうない。

多くの場合、登場人物すら何が起こっているのかわかっておらず、

読者はこの不安や閉塞感に満ちた、不条理な展開に呆然とするほかない。

彼女は作品内ではっきりとした答えを書かないため、

ある人は作中に登場するものを何かの比喩ととって論理的な解釈をし、

またある人は直観的に作品を理解するかもしれない。

読む人によって形を変えつつも、

精神の深淵へ何らかの影響を与える、そんな作品である。

 

人々のリアルな姿・余華

84年に作家デビュー。

初期の作品は、まさに〝先鋒派〟らしい実験的な作風だったが、

92年に『活着』を発表し、ベストセラーとなった頃から、

一般市民のリアルな姿を、歴史背景を絡めつつ描くように。

その描写は、人々の欲望や感情が時にグロテスクなほど誇張され、

作品発表後は度々、傑作か駄作かを巡り大論争が起こる。

今年6月には、7年ぶりの長編『第七天』を発表したばかり。

内容は、死んだ男が時空を移動しながら、様々な死者と対話を交わすというもの。

早速、評価は真っ二つに分かれている。

 

~広東ジャピオン2014年9月8日号

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

最新号の電子版はこちらから

PAGE TOP