日本でも中国でも、以前、
「修身」という科目があったが、
今は名を変え、
日本では「道徳」、
中国では「思想品徳」と呼ばれる。
国情や社会習慣に適合した道徳的心情を育て、
判断力や実践意欲を持たせることを目的とする。
働いたら勝ちor負け
『共和国教科書・新修身』では、
早寝早起きといった良い生活習慣や、
年長者を敬うといった礼儀のほか、
有名な故事を通じて得られる教訓を学ぶ。
故事は中国のみならず、
コロンブスやワシントンといった、
外国のエピソードも登場している。
そんな中、職業という項目では、
現代の失業者が聞いたら卒倒するようなことを述べる。
「猫が鼠を捕まえ、犬は門を守る。
それぞれ司ることがある。
人が無職ならば、犬猫にも劣るのだ」と。
現代でも通用する内容は多いが、
この言葉に限っては、ワーキングプア層が急増し、
「働いたら負け」の社会になりつつある今の日本では、
響きにくいかもしれない。
ほかに、『イソップ物語』に収録されている
「ウサギとカメ」の寓話もイラスト付きで紹介され、
この教訓が世界共通なのだということを改めて感じられる。
カッコウの教訓に学べ
上海にて「思想品徳」科目でよく使われるのは、
『品徳と社会』という教科書。
低学年では、生活モラルを中心に学ぶ。
現代の教科書でも、
寓話を通じて道徳的教訓を学ぶという手法がとられ、
日本ではあまり馴染みのない
「田植えを催促するカッコウ(布谷鳥)」
という民話が載っている。
「ある農民が、春に種蒔きをせず遊んで過ごし、
秋に収穫できず餓死した。
その後、農民はカッコウになり、
春になると遊んでいる人々に、
『種蒔け種蒔け(播谷播谷)』と注意するのだった」
古来、寓話は教育に必要不可欠な道具なのである。
日本の教科「国語」は、
中国では「語文」と呼ばれ、
言語表現の理解や言語による
表現方法の獲得などを目的として行われる。
ちなみに、現代中国の小学生は、
100首以上の漢詩を暗記させられるという。
奇抜な話にワクワク
『開明国語課本』では、
児童の生活に関するものや、
社会に出る際に役立つ知識などを掲載している。
中の文章の多くは短編で、
単純な上、歯切れも良く、
現代においても、
外国人の中国語学習用の教材として役立つこと必至だ。
文章を読んでみると、
子どもにありがちな会話もあり、
思わずほのぼのとしてしまうこともしばしば。
例えば、猫の名字についての子ども2人の会話で、
1人が、猫が「小白」と呼ばれているから、
〝小〟が名字だと勘違いし、
もう1人が、それは名前だと偉そうに否定するも、
その子も結局名字を知らないと言う。
こうしたやりとりは、今でもよく聞かれる会話だ。
ほかにも、
中国版『ガリバー旅行記』たる、
中国古典小説『鏡花縁』を下敷きにしたであろう
物語も目を引く。
船乗りの男が遭難して、
「小人の国」に行くというもので、
その国の住人はもちろん、
牛や馬、草や木など、
何もかもが小さいという奇想天外な話に、
児童も楽しく勉強したことだろう。
折り紙を折り詠う歌
現代の教科書でも、
身近な遊びや動植物をテーマに、
ピンイン付きの文章を取り上げる。
「折り紙の歌」という詩では、韻が踏まれ、
折り紙を折る様子がリズムよく詠まれている。
また、実際に折り鶴の作り方も掲載し、
遊びの要素を入れつつ学ぶ仕組みが出来ている。
~広東ジャピオン2015年1月26日号