水滸巡礼~108の足跡~時遷(じせん) 第13回

302水滸巡礼 HITO

 

財宝、情報、全てを盗む

神になった伝説の義賊

 

時遷は、現在の天津市最北部に位置する薊州(けいしゅう)で、

窃盗を生業としていた。

俊敏かつ柔軟な身のこなしで、太鼓の上で飛び跳ねても、

まるで蚤が跳ねているかのように音がしないことから、

「鼓上蚤(こじょうそう)」と呼ばれた。

 

302水滸巡礼 TATEMONO

独楽寺は唐、遼代を代表する寺院で、

〝天津十景〟のひとつに選ばれている。院内の四天王壁画や観音像が有名

 

時遷は、自ら志願して梁山泊に入った、数少ない人物のひとり。

情報収集の任に就いていたある日、

梁山泊討伐軍の呼延灼が攻め込んできた。

敵軍の、30騎を横1列に鎖でつないで攻撃する戦法「連環馬」に、

梁山泊軍はなす術もなく敗退。

そこで宋江は、連環馬を破る秘技を知る人物、

徐寧(じょねい)を仲間に加えようと企てる。

そして時遷に、徐寧の家宝である鎧を盗み出し、

おびき寄せるよう命じた。

かつて誰も盗めなかった鎧だが、

時遷は深夜、彼の屋敷に忍び込み、寝室で鎧を発見する。

しかし、鎧は梁の上から吊るされた状態で鈴が付けられ、

少しでも動かすと音が鳴る仕組みであった。

時遷は天井裏から鎧を入り込み、梁から引き上げ、

鈴が鳴ると猫の鳴き真似をして誤魔化し、見事に盗み出した。

結果、徐寧を引き込むことに成功する。

 

以降も、時遷は機密伝令として、敵陣に潜入しては火を放ったり、

偽降伏の計略に参加したりするなど、持ち前の機敏さを活かし、

活躍を見せてゆく。

死後は、長江以南の地域で、

乞食・泥棒の神として奉られるようになったという。

 

302水滸巡礼 HUKEI 1

黄崖関長城。薊県中心部から北30kmの場所に位置する。

明代の将軍、戚継光(せきけいこう)が再建させた

 

時遷が暮らした薊州。現在は天津市に属し、薊県と名を変えた。

盤山風景区や黄崖関長城など、

自然、歴史ロマン溢れる場所として有名だ。

時遷はここから、財宝ではなく、天下を盗るのに貢献すべく、

梁山泊を目指したのだろうか。

 

302水滸巡礼 TIZU

 

 

~広東ジャピオン2014年4月21日号

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