民族訪ねて三千里~タタール族(塔塔爾族)第23回

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雪解けに豊作を願う

夏の祭「サバントゥイ」

 

タタール族は、中国国内で5000人にも満たない、

少数民族の中の少数民族である。

「タタール」の語源はテュルク系言語の「ほかの人々」を意味するもので、

日本では中国から伝わった「韃靼」を使用し、

元朝滅亡後のモンゴル系諸民族をこう呼んだという。

 

タタール族は、毎年夏に行われる「サバントゥイ」という祭りが有名だ。

「サバントゥイ」とはテュルク系諸語で「犂(すき)の祭」を意味し、

彼らの伝説によれば、雪解けが始まる春、

種蒔き時期の前に豊作を願って行うものである。

世界中に分散するタタール民族が、イスラム化する以前より行われており、

競馬や木の棒登り、卵を載せたスプーンを口にくわえて走るレースなど、

ユニークな競技で構成される。

 

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1. サバントゥイの際、人々は皆華やかな民族衣装を着る。女性の帽子とサシェ付きの長いドレスが特徴的

2. キョレシは、少年の試合から始め、祭りの終盤になるにつれ盛り上がりを見せる

3. タルタルステーキは、近年では馬肉ではなく、牛肉が主流

 

中でも「キョレシ」と呼ばれるタタール式レスリング競技は、

祭りの最後に決勝を行い、勝者は「バートゥル(勇者)」と呼ばれ、

優勝賞品を手にすることができる。

 

その昔、東ヨーロッパの人々は、

タタール族のことを「タルタル人」と呼んだ。

「タルタルステーキ」はその頃のタタール族の食文化が起源とされ、

世界中に広がっている。

遊牧民族であったタタール族は、

乗用だけでなく食用のためにも、馬を何頭も連れて移動した。

しかし馬は筋張って固く、鞍の下に肉を入れた袋を置いて潰し、

匂いを消すためにスパイスを混ぜたのだそうだ。

 

ほかにも、レーズンや干しアンズを使ったケーキや、

じゃがいもを織り込んだパイなど、

タタール族の料理はどれも世界中で愛されている。

この地を訪れる際は、食を堪能する旅にしたい。

 

~広東ジャピオン2013年5月20日号

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