漁を生業とする海の民
海の神を崇めた歌と踊り
ジン族は、広西チワン族自治区防城港市東興の山心、万尾、巫頭という
3つの島及びその付近に居住している。
彼らは16世紀初頭、ベトナムから当時無人島であったこれらの島に移り住んだとされる。
その後、漢族や他の民族と共に島を開拓し、同地で生活するようになったという。
彼らは主に漁を生業としている。島の周辺は豊富な漁業場で、
引き網漁やいかだ漁など、潮の満ち引きを熟知した独自の漁法で、
サメやエビなどを獲るほか、
現在では真珠やタツノオトシゴの養殖にも力を入れているという。
かつてより、海と共に暮らしてきたジン族には、次のような伝説がある。
1. ジン族の女性。漁や踊りの際も、ベトナム同様、伝統衣服アオザイを着用する
2. 女性が弾いているのは彼ら独自の弦楽器「独弦琴」。その名の通り、弦は1本しか張られていない
3. 「魚醤」(ナンプラー)の製造も盛ん
「その昔、今のベトナムのバック・ロン・ヴィー島近くの海には、大ムカデがよく現れた。
近くを通る船は大ムカデに遭遇すると、生贄として人を捧げなければならず、
捧げないと船ごと飲み込まれてしまうため、ジン族の人間はとても怖れていた。
ある日、1艘の船がバック・ロン・ヴィー島を通りかかった時、大ムカデが現れた。
怖れた船長は年老いたジン族の男を捧げようとしたが、
この男はムカデを怖れるどころか、
火で焙った金属製の武器を持って大ムカデの口に飛び込むと、殺してしまった。
後に、この男が当時伝説の海の神として語られていた
〝鎮海大王〟なる英雄であることが分かり、人々は彼を大いに崇めた」
ジン族の一大行事は、毎年旧暦6月や8月などに行われる「唱哈節」。
祭りの前日はこの〝鎮海大王〟を奉って今年の釣果を感謝し、
当日から3日3晩、皆で歌い踊って来年の豊漁を願うというもの。
彼らの大海への果てない想いが込められた歌と踊りを身体で感じたい。
~広東ジャピオン2013年9月23日号