命の源となる泉
大地を切り刻む河
トンシャン族は、モンゴル系でありながらイスラムを信仰し、厳しい戒律を守る。
大きな祭事には、ラマダーン明けを祝う「開齋節」、
犠牲祭に当たる「古爾邦節」、ムハンマドの誕生日に行う「聖紀節」がある。
祭りの日は朝からごちそうを用意し、
双管の竹笛「ミミ」による演奏や「ホアル」と呼ばれる歌、また踊りなどで盛大に祝う。
そのほか、婚礼の際に「哈利舞」を男女で踊る風習があったが、
最近ではあまり見られなくなり、お年寄りのみが振付を覚えているという。
トンシャン族は、中国少数民族の中で最も識字率が低いとされる。
読み書きができない人が人口の6割にものぼり、特に女性が多い。
そのため、古来からの歌や伝説、故事、叙事詩などは全て口承による。
1. 婚礼の舞「哈利舞」を記録した絵図。近年、失われつつある伝統芸能を保存する動きも出てきた
2. トンシャン族の子ども。就学年数は平均で1年半程度である
3. 年々広がっていく黄土高原。黄河の支流がこの大地を刻むように流れる
この一帯は砂漠が多く、数少ない泉はオアシスとしての役割を果たしている。
その泉のうちの1つ「五眼泉」にまつわる、こんな伝説がある。
「その昔、泉の水が干上がって干ばつが続いた。
苦しんだ人々は泉の周囲に集まり、1人の僧侶に雨乞いの読経をするよう頼んだ。
僧侶が昼夜を問わず泉のそばに座って読経を続けると、
3日目の夜、泉から1頭の白い山羊が飛び出して来た。
僧侶は頭巾を解いて山羊の角に巻きつけ、もう一方の手に持ったベルトで山羊を打った。
山羊が苦痛で叫び、跳び上がると、頭上に黒雲が現れ、雨が降り出した。
以来、人々は干ばつが続くとこの泉に山羊を連れ、雨乞いをするようになったという」。
この一帯に広がる黄土高原は、黄河の水を黄色に染める。
黄河によって育まれた文明の地に立ち、悠久の時を感じよう。
~広東ジャピオン2013年8月19日号