民族訪ねて三千里~トールン族(独龍族)第35回

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自然の中に溶け込む

天神からの贈り物

 

トールン族は、独龍江付近の山奥に暮らし、

中国少数民族の中でも生活する自然環境の苛酷さでは屈指の民族である。

民族滅亡の危機に晒されたこともあったそうだが、今でも細々と村を作っている。

村によっては電気もなく、水も不便だが、大自然に溶け込み、

自然の一部として生きる人間の姿がそこにある。

 

トールン族の生活形態は農耕・牧畜だが、これに因んだ伝説が残っている。

「昔、この一帯を覆い尽くす洪水が起こった時、

山へ入っていて難を逃れた少年・彭根朋は、天神の娘を娶るため、天上界へ上った。

天神の2人の娘のうち、彭根朋は木美姫という隻眼の娘を選び、

天神の許可を得て地上へ連れ帰ることにした。

天神は、2人に穀物の種や幾種類もの動物、虫などを与えたが、

帰る際後ろを振り向いてはならぬと2人に告げた。

 

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1. トールン族の老女性。女性は12~13歳になると、眉間に×印、両頬から口の周りにかけて刺青を彫る

2. トールン族の料理。素材の味を生かしたものが多い

3. トールン族は、カラフルな麻織物を織る。羽織ったり、敷物にしたりと用途が広い

 

しかし、凄まじい動物の鳴き声を聞いた木美姫が

うっかり振り向いてしまうと、動物たちは一目散に逃げた。

2人は慌てて動物を追ったが、

豚や馬、牛、鳥などしか捕まえることができなかった。

トールン族がこれらの家畜しか持たないのは、このためである。

また、天から遣わされた書物を2人の子どもたちが食べてしまったため、

トールン族は文字を持たず、歌や故事など全てを口承によって残すことになった」。

 

トールン族の村は山深く、冬は雪に閉ざされるところも多いが、

人々はよそから来た者を温かく受け入れるという。

山の斜面に立ち、大いなる自然に向かって、

声高く狩りの歌や創世神話を歌う人々の逞しさには、学ぶべきところがある。

 

~広東ジャピオン2013年8月12日号

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