器用さが生み出す工芸
礼儀と伝統を貴ぶ民族
オロス族は、19世紀後半にロシアから新疆や内モンゴルに移住し、
帰化したのが最初と言われる。
「列巴(フリェーブ)」と呼ばれるパンを主食とする今日の彼らの生活は、
ロシアに住む同系民族と何ら変わらない。
かつて、新疆の都市部に住んでいたオロス族は、
手工業、農村部の人々は養蜂や牧畜業に携わっていたという。
手先の器用さで知られ、
伝統工芸品「俄羅斯套娃(マトリョーシカ人形)」などの手工業が盛んに行われている。
女性の顔が描かれた木製人形の中に、
また人形というこの入れ子のような工芸品には次のような物語がある。
1. オロス族の女性。ロシアに住む同系民族と同じく、スカーフを頭に巻き、ワンピースを重ね着するスタイル
2. イリ川。イリ・カザフ自治州からカザフスタンの南西部にかけて流れる
3. 彼らの伝統工芸品である「マトリョーシカ人形」
ある兄妹が羊を放牧していた時、妹がはぐれてしまった。
見つからない妹を想って、兄は木に妹の姿を刻んだ。
何年経っても妹は見つからず、成長した妹を想う兄は、その度ひと回り大きな姿を刻んだ。
こうして数が増えていき、今日の「マトリョーシカ人形」が誕生した。
古来より、礼儀を重んじる民族としても有名で、
祝日は来客に列巴と塩を振舞うことで、相手への友諠と善意を現す。
なお、黄色は誠実でない色とされ、黄色の物を贈ることを禁忌とし、
反対に青は友好を象徴する色として、贈り物に選ばれるという。
また、非常に踊りが好きな民族で、
マンドリンや民族楽器の「巴拉莱卡(バラライカ)」という弦楽器の伴奏に合わせて、
男女一緒にダンスをするのが特徴。
女性はハンカチを振りながら、男性は口笛を吹きながら踊り、
さらに楽器奏者も混じり、華やかな舞踏を繰り広げる。
伝統と礼儀を重んじ、華やかな舞いで人をもてなす彼らの地に、
足を踏み入れてみたい。
~広東ジャピオン2013年10月14日号