上海から走る喜びを伝え、皆で分かち合いたい
上海発の日本人ランニングクラブ、TARCを立ち上げた前澤典子さん。
月に300㌔以上走る彼女は、留まることなくランニングの魅力を上海より発信する。
覚えたマラソンの快感
「上海に来た当初は、目の前が仕事のことばかりでゆとりが持てず、
ストレスフルな日々を過ごすだけでした」と話す前澤さん。
今や、本業の医療業務をこなす傍ら、
メンバーと週4回の練習会や合宿を行ったり、
中国のマラソン大会に参加したりと、
精力的にクラブを運営している。
前澤さんがマラソンと出会ったのは、社会人になりたての頃。
当初はダイエット目的で走り始めたが、
たまたま参加した地区マラソンの5㌔部門で優勝、
そして当時活躍していた、
女子マラソン五輪メダリストの有森裕子選手に魅了され、
本格的にマラソンと向き合うことに。
地元の駅伝チームでの練習を通じ、
やがては憧れの東京国際女子マラソンへの出場を果たす。
同マラソン大会にて、一流の選手たちと同じ土俵で戦えたことに、
確かな喜びを感じたという。
走る幸せを共有する
その後、家族の都合で来海。
元々海外での生活に憧れていた前澤さんだが、
慣れない環境での生活は楽なものではなかった。
頭の中は仕事のことばかりで、
日常からいつの間にか走ることが消えていた。
そんなある日、彼女がランナーであることを知った知人が、
上海マラソンの参加を勧める。
あまり乗り気にはなれなかったが、ハーフ部門に出場。
結果、完走はできたものの、
不甲斐ない記録にショックを覚えた。
かつてはあれほど走れたのに、少しのブランクで衰えた自分に腹が立ち、
前澤さんは公園などで再びランニングを始めることに。
走るうちに意欲も増し、生活に潤いが出てきた。
同じく上海マラソンで走った人たちと知り合い、
1人で走るより、皆で走る幸せを共有できれば
モチベーションも上がるのでは、と考え始めるようになり、
仲間10人程度で最初は「上海ランナーズ」を結成。
そのうち、他のランニングクラブが彼女たちに加わり、
今日の「TARC」となったのだった。
毎週火、土、日曜日に行うチームの走行練習会
ココロと身体の健康
そんな彼女たちの活動を知り、
上海の日本人ランニング愛好家たちが次々とTARCに集まり、
メンバーはいつの間にか300人を超えるほどに。
今では練習会のほか、メンバーが日々走った距離に応じて、
一定金額を貧困地域に寄付する「1㌔1元活動」や
「TARC文庫」といった社会活動も行う。
ココロと身体の健康をモットーに、
上海の走る環境をクリエイトしながら、
前澤さんはこれからも走り続ける。
~広東ジャピオン2014年6月30日号