雪解けに豊作を願う
夏の祭「サバントゥイ」
タタール族は、中国国内で5000人にも満たない、
少数民族の中の少数民族である。
「タタール」の語源はテュルク系言語の「ほかの人々」を意味するもので、
日本では中国から伝わった「韃靼」を使用し、
元朝滅亡後のモンゴル系諸民族をこう呼んだという。
タタール族は、毎年夏に行われる「サバントゥイ」という祭りが有名だ。
「サバントゥイ」とはテュルク系諸語で「犂(すき)の祭」を意味し、
彼らの伝説によれば、雪解けが始まる春、
種蒔き時期の前に豊作を願って行うものである。
世界中に分散するタタール民族が、イスラム化する以前より行われており、
競馬や木の棒登り、卵を載せたスプーンを口にくわえて走るレースなど、
ユニークな競技で構成される。
1. サバントゥイの際、人々は皆華やかな民族衣装を着る。女性の帽子とサシェ付きの長いドレスが特徴的
2. キョレシは、少年の試合から始め、祭りの終盤になるにつれ盛り上がりを見せる
3. タルタルステーキは、近年では馬肉ではなく、牛肉が主流
中でも「キョレシ」と呼ばれるタタール式レスリング競技は、
祭りの最後に決勝を行い、勝者は「バートゥル(勇者)」と呼ばれ、
優勝賞品を手にすることができる。
その昔、東ヨーロッパの人々は、
タタール族のことを「タルタル人」と呼んだ。
「タルタルステーキ」はその頃のタタール族の食文化が起源とされ、
世界中に広がっている。
遊牧民族であったタタール族は、
乗用だけでなく食用のためにも、馬を何頭も連れて移動した。
しかし馬は筋張って固く、鞍の下に肉を入れた袋を置いて潰し、
匂いを消すためにスパイスを混ぜたのだそうだ。
ほかにも、レーズンや干しアンズを使ったケーキや、
じゃがいもを織り込んだパイなど、
タタール族の料理はどれも世界中で愛されている。
この地を訪れる際は、食を堪能する旅にしたい。
~広東ジャピオン2013年5月20日号