故郷を遠く離れて
西遷を記念した祭り
シベ族は、新疆ウイグル自治区と、
遼寧省など東北部の二手に分かれて暮らしている。
これは、清朝時代に、1000人余りのシボ族兵士が辺境守備の命を受け、
新疆へ移動したことによる。
東北部のシベ族は漢語やモンゴル語を話すが、
新疆のシベ族は独自の文化を守り、満州語系のシベ語を話す者が多い。
そのため、東北部に住む民族の中では失われてしまった言語を話す、
数少ない民族となっている。
また4世紀頃、シベ族の祖先の一部が遼東や華北に南下し、北魏などを建国した。
その南下に際して生まれたこんな伝説がある。
「南を目指した人々は、鮮卑と呼ばれていた。
彼らが大興安嶺山脈の中で道に迷い、途方に暮れていると、
虎のような爪を持ち、馬に似た身体に角を生やした、
1頭の聖獣が現れ、道案内をしてくれた。
彼らはこれをトーテム獣として祀ることにし、
住居の西または北の壁にこの獣の図を飾るようになった」。
1. チャプチャル・シベ族自治県のバザール。様々な雑貨に食材、ストリートフードが売られている
2. シベ族の少年。顔立ちはモンゴル系の者が多い
3. シベ族伝統のカーペット。シルク製で織られたものは、希少品として高値がつくことも
この民族最大の祭りは、旧暦の4月18日に行われる「西遷節」である。
その名の通り、新疆へ旅立った人々が道を作り、
自らの住む場所を切り拓いたことを記念するもので、
この日は中国中のシベ族が各所で集まり、叙事歌『西遷之歌』を歌い、
口琴や弦楽器「ドンブラ」を弾き踊るそうだ。
シベ族がかつて移動したのは、日本の北海道から沖縄とほぼ同距離に当たる。
親や子どもを連れての過酷な旅を遂げ、新しい地に自らの村を築いたシベ族。
元は狩猟民族であったが、現在は農耕・遊牧を営む。
羊や小麦粉、野菜をふんだんに使った特色ある料理をぜひ味わいたい。
~広東ジャピオン2013年7月22日号