きっかけから枠を広げ
文化を発信する
知らない日本を伝えたい
中国の人が受け入れやすい形で、日本のよいところを知ってもらいたい。
映像を通し、中国で日本の文化を発信している
松田奈月さんの想いとは――?
中国映画との出会い
松田さんが現在携わるのは、
中国のネットで配信されている、日本の旅行番組制作。
毎月、撮影や取材のために日中を往復する、多忙な日々を送る。
大学時代は日本文学を専攻していた松田さんだったが、
在学中に出会った中国の文学作品や映画をきっかけに、
中国という国そのものへの興味を深める。
映画で出会ったチャン・イーモウ(張芸謀)や
チェン・カイコー(陳凱歌)など、多くの著名な映画人が、
名門の北京電影学院出身であることを知った。
そして日々高まっていく中国の映像の情熱が抑えきれなくなった1999年、
勤めていた会社を辞め、留学を決意。
同校で中国語と撮影の両方を学び始めた。
「まだ学生だったヴィッキー・チャオ(趙薇)に会ったり、
新作映画を見たりと、充実した生活を送りました」と
松田さんは当時を振り返る。
日本のテレビ番組制作
留学を終え、北京のローカル番組制作会社などで約1年半勤め、
帰国を考えていたところに転機が訪れる。
日本のテレビ制作会社から、上海での仕事を依頼されたのだ。
それは2003年当時、日本の読売テレビで
深夜に放送されていた番組『アジャパー』の中で、
現地の面白ネタを映像で紹介するというもの。
松田さんは街を歩き、公園で木に抱きつくおじさんや、
積極的に家事に勤しむ男性などを撮影し、上海の日常を伝えていった。
で、上海現地ディレクターの募集があり、松田さんはそれに応募。
見事採用され、早速仕事が舞い込んだ。
「情報収集のために市内をあちこち回り、
現地にしかないものを伝えることの面白さを知った」と松田さん。
そしてこの経験を機に、
上海で自分が発信する番組を作りたい、という想いが芽生えた。
ロケ現場にて。
松田さんが指揮を執り、3~5人の少人数クルーで制作を進める
上海から日本を伝える
『アジャパー』の仕事が終了すると、松田さんは、
同じような番組を中国でもという想いのもと、
上海の映像制作会社に身を置き、
企画、制作、編集スタッフとして、番組作りに励んだ。
手がけた番組の中で代表的なのが、
中国や日本、韓国などアジアの芸能界やスポーツ界の、
第一線で活躍する女性の素顔に迫った『亜洲美魅』という番組。
日本のテレビ番組『情熱大陸』のアジア女性版をコンセプトに、
これまで30人以上の女性を紹介し、
多くの視聴者からの反響を呼んだ。
このほか、中国のタレントを起用した日本紀行番組など、
中国人にとって親しみやすい形で、
彼らの知らない日本を映してきた。
今後も、1つのきっかけから可能性を広げ、
日本の映像を届ける姿勢は崩さない。
今日もロケに、取材にと、日中を奔走する。
~広東ジャピオン2014年10月27日号