山に囲まれた暮らし
黒い灰による魔除け
モリンダワ・ダウール族自治旗は、
中国国内で唯一のダウール族の自治区域であるため、彼らの大半がここに住む。
ダウール語で「モリンダワ」とは
「馬に乗ってようやく越えることの出来る山」という意味を持ち、
北には延々と大興安嶺山脈が続く。
ダウール族は居住地によって遊牧、半農半牧、農耕などを生業として暮らしているが、
狩猟もまた彼らのサイドビジネスとして続いている。
狩りに出る際、男たちは肩に猟銃を背負い、白樺の皮で作った「鹿寄せ笛」を吹く。
これは2㌢四方ほどの白樺の皮を2つに折り、
舌の上に乗せて吹くと「ピー」という音が出るものだ。
ダウール族が昔からよく好んで食べるものの中に、「クンミラ」という草がある。
彼らは同名の歌を歌いながらこれを摘み、すり潰してペースト状にして食べる。
また「心の中の人」という愛の歌や、山ツツジが咲く風景を歌った「山いっぱいの赤い花」、
嫁に行った娘が四季折々に、故郷を懐かしむ「ナチラサナパイチェン」など、
彼らの歌は全て「ナーヤニーヤヤ、ナーヤヨ」という一節で区切られる。
1.「オボー」と呼ばれる墓標の1種。山頂など高所に建てられ、旅に出る時、道中の安全を祈願する
2.ダウール族の男性。ダウール族はホッケーを「貝闊(ベイクォ)」と呼んで好む人が多い
3.アムール川水系の嫩江から景色を望む
ダウール族には、旧暦の1月16日を
「ホウオドゥール(黒い灰の日)」と呼んで特別に祝う習慣がある。
この日、老人たちは明け方から起き出し、
寝ている子どもの額に、鍋の底の黒い灰を塗りつけて魔除けとし、
新年の豊作や家族の幸せを祈る。
伝説によればこの日は「鬼の日」であり、顔を黒く塗るのは、
鬼の目をごまかすためだとか。
この地域には草原の景色以外にも、キャンプや騎馬、
民族体験ができる場所がある。
草が生い茂り、気候の爽やかさはほかと比べても格別だ。
~広東ジャピオン2013年3月4日号