義に厚い入れ墨坊主
柳の木を素手で引き抜く
魯智深は、本名を魯達という。
物語では、身長が2㍍近くある巨漢で、粗野な性格ではあるものの、
曲がったことを嫌い、弱者を助ける義侠心に富んだ人物として描かれている。
出家して、全身に花の入れ墨をしていたことから、「花和尚」と呼ばれた。
彼がまだ魯達と呼ばれ、村の小官をしていた頃、
ある酒屋に、旅芸人の父娘がいた。
村の庄屋に虐げられている父娘を見た魯達は、
庄屋を完膚なきまで殴り、殺めてしまった。
この件で彼はお尋ね者となり、逃亡生活が始まる。
岩山寺は五台山にある代表的な寺院の1つ。
山の北麓に位置し、1158年に建立された
父娘は、逃亡する彼に、仏門の名山、五台山への出家を勧める。
魯達は話を受け入れ、早速剃髪をし、魯智深と名を改めた。
しかし、元来気性の荒い彼は、寺の生活に馴染めず、
酒を浴びるように飲み、寺の仁王像を壊すなど、戒律を犯して破門に。
その際、1人の長老が彼に、現在の河南省開封市にある大相国寺に行くよう諭した。
大相国寺に着いた魯智深は、寺の菜園の門番を任されるが、
ここでも豪傑ぶりを発揮する。
ある日、1人の農民が、大きな柳の木に、卵が入った鳥の巣を発見。
魯智深は農民のため、柳の木を両手で根から引っこ抜いてやった。
こうして人助けを通じ、彼の名は徐々に知られていくが、
やがて梁山泊を目指す武松(ぶしょう)らに出会い、水滸の世界へと誘われる。
世界遺産に登録されている五台山。
合計40以上の寺院が点在し、かつては日本からも多くの僧が訪れた
魯智深が出家した五台山は、山西省北東部に位置し、
中国5大避暑名山の筆頭に挙げられる。
彼はこの地で数々の騒ぎを起こしたが、長老の言葉だけは聞き入れ、
ここから梁山泊へと旅立った。
花和尚・魯智深誕生の地として、今でも多くの旅人が五台山を訪れる。
~広東ジャピオン2014年3月3日号