古代より勤勉な山の民
悲劇のヒロインに捧ぐ歌
ヌー族は怒江リス族自治州の貢山県、福貢県などに分布して生活している。
言語はヌー語を使用するが、集落によって多少異なるという。
貢山に住むヌー族は自らを「阿怒(アーヌー)」と呼び、
福貢県では「誓阿怒(シーアーヌー)」と呼ぶなど呼称にも差があるようだ。
古代より、〝怒人居山巓(ヌー族は山の峰に住む)〟と言われ、
今も高い山岳地帯に居住する。
トウモロコシやムギなど畑作を生業とし、
自然の精霊を崇拝する勤勉な民族としても有名だ。
1. ヌー族の女性。麻布を編むことに優れ、既婚の女性はスカートの縁にレースを加える
2. 怒江。彼らの名称は怒江の両岸で暮らしていたことに由来する
3. 女性は、子どもの時から麻布織りの技術を学ぶ
そんな彼らの最も重要な行事は毎年旧暦3月15日に行われる「鮮花節」。
「仙女節」とも呼ばれるこの祭りには、次のような言い伝えがある。
「その昔、ヌー族の住む山村に、阿茸と言う聡明で美しい女性がいた。
勤勉で苦労を惜しまない彼女は、
以前から干ばつで農作物が育たない村の現状をどうにかしようと、
山を切り開き、泉から水を引き出した。
おかげで村には水が行き渡り、作物が育つ豊かな緑野になった。
こうして阿茸は人々から仙女と呼ばれ、崇拝されていたが、
阿茸はある日、村の男に強引に言い寄られた。
彼女が拒否すると、男は無残にも彼女を洞窟で殺害してしまった。
その日こそが、旧暦の3月15日だった」
それからというもの、ヌー族の民たちは命日になると、
山の洞窟に花を捧げ、ご馳走を準備し、歌と踊りで、仙女・阿茸の魂を鎮める。
また、トウモロコシとソバを原料とした「咕嘟飯」を使った「咕嘟酒」が振舞われ、
盛大に祭りを執り行う。
山嶺にまで響き渡る、悲劇のヒロインに捧げる歌に、しっかりと耳を傾けたい。
~広東ジャピオン2013年10月21日号