茶をたしなむ農耕民族
母への純真な想いを像に
ドアン族は、同じ自治州でも
タイ族やチンポー族の住民たちと居住区域を分けながら、
同様の農耕を主体とした生活を送っている。
中でも、盛んなのは茶の栽培。
元来、茶を愛飲する民族として知られ、
古くから〝古老的茶農〟と呼ばれていた。
「濃茶」という非常に濃くいれた茶を飲み、
日常生活ではもちろん、来客や重要な儀式、行事の際には、
最初に濃茶でもてなしをするという。
そんなドアン族の最大の祭事は、
毎年4月、清明節から7日目に行われる「溌水節(澆花節)」。
周りの人や物に水をかけてお清めをするこの祭りには、こんな伝説がある。
1.ドアン族特有の腰巻「藤篾腰箍」は、女性が20歳になると着用するという
2. 生活に欠かせない「濃茶」の茶畑。各家も家屋の周囲に茶の木を植える
3. 毎年4月に行われる「溌水節(水かけ祭り)」。水を人にかけ合い、新年の始まりを祝う
「その昔、ドアン族の村に、母親と阿仏という息子が2人で暮らしていた。
心優しい母親は日夜懸命に働いていたが、
過労がたたって片目を失うと、
阿仏はこれまでのように働くことができなくなった母親をしばしば罵るようになった。
そして、ある日、阿仏が山に芝刈りに行った時のこと。
1羽の烏が飛んで来たので、阿仏は小石を投げたが命中しなかった。
すると再び、烏が飛んで来て、年老いて痩せた烏に餌を与え始めた。
この光景を見て阿仏は、自分は烏にも劣る、と母親への態度を恥じた。
やがて母親が死ぬと、阿仏は母親の姿の木像を彫り、
遺体と共に木の下に埋め、毎日墓前で詫びた。
そのうち年月が過ぎ、色あせた木像を取り出すと、
花びらをつけた水で丁寧に洗った。
そして、阿仏が芝刈りに行った日が清明節の7日目であった」
これが今日まで伝わり、今の溌水節となった。
母への純粋な想いが詰まった溌水節を見ると、心が洗われることだろう。
~広東ジャピオン2013年11月4日号