娘に姿を変えた犬
詩的な歌を交わす
プイ族は貴州省黔南県を中心に暮らす、大規模な民族集団である。
複雑に入り組む山の斜面に数十戸ずつの集落を形成し、集落の間には水田が広がる。
高床式の杭上家屋か平屋に住み、高床式の家は瓦葺きに床下を豚小屋にする。
客を迎える時や冠婚葬祭、新築祝いには、「ウンラオ(酒歌)」を歌う。酒を酌み交わし、
豆や漬物の「塩酸」を並べたテーブルを囲んで、
故事や祝い、哀悼など様々な内容が歌われるという。
プイ族に伝わる昔話に、次のようなものがある。
「天涯孤独の青年・昆侖は、麦畑を耕して生活していた。
ある日、昆侖が畑で麦を食べていた白馬を捕らえたところ、
白馬は昆侖を連れ海の中へ入って行った。
海の底の大きな屋敷に白馬の飼い主がいて、
麦の代金として財宝を渡そうとしたが昆侖は断り、代わりに1匹の犬をもらった。
1. プイ族の青年。男性が民族衣装を纏うのは、現在では祭事などの時のみだという
2. プイ族の家屋に立つ女性。女性は民族衣装の帽子から靴まで、繊細な刺繍を施す
3. 山の斜面に点在する集落
昆侖は犬を可愛がり、以前のように畑を耕して生活した。
ある日昆侖が畑から帰ると、家はきちんと整い、食事の用意がされていた。
翌日も、また翌日も食事は用意され、
不思議に思った昆侖がある日出かけたふりをして家に戻ると、
犬は皮を脱いで美しく聡明な娘に姿を変え、食事の支度をしていた。
昆侖が犬の皮を焼いてしまうと、娘は元に戻ることができず、
昆侖の妻として幸せに暮らすのだった」。
プイ族の男女は、竹筒で糸電話を作り、40~50㍍も離れて気持ちを伝え合う。
一種の歌垣だが、プイ族独特の恋愛形式として情緒深い。
この地を訪れたなら、谷を越え歌を交わす姿を探してみたい。
~広東ジャピオン2013年7月29日号